Cratia『Phoenix Land』

[TRACK LIST]

1. Justice for all
2. Don’t look back
3. We gonna rock
4. Doomsday
5. 闇の果てで (Chorus キム・ジェソン、パク・ドンイル / Piano ナ・ウンゾ)
6. 生まれた時からうるさいオヤジだったわけではない
7. 英雄の夢
8. 人形王子
9. Love machine
10. あなた、私の恋 (Organ キム・ソンビン)

ロックの不死鳥「クラティア」が夢見る世界 『Phoenix Land』

3年ぶりのニューアルバムだ。クラティアが公式4番目に当たる『Phoenix Land』を手にし、我々の前に立った。オムニバスアルバム『Friday Afternoon』(1988)を通じて初のアルバムデビュー、そして翌年のアバランシとのスプリットアルバムの発売以来、瓦解していたクラティアが再びイ・ジュンイルを中心に再整備され、『Friday Afternoon』以来25年ぶりに正規アルバム『Retro Punch』(2013)を発売した時、これほど長く活動を続けると予想した人はそれほど多くなかっただろう。「詰め合わせの贈り物」のような喜びはあったが、状況に押され、正式ボーカリストなしに構成されたラインナップという印象もまたぬぐえなかったからだ。クラチアはこのような懸念はそっちのけで、2・3年おきにフルアルバムを発表し、黙々と自分だけの活動を続けている。

今回のアルバム『Phoenix Land』のクレジットでは、既存メンバーのイ・ジュンイル(ギター)とオ・イルジョン(ドラム)の隣に新しく迎え入れられたベーシストのファン・テジョンとボーカリストのキム・ヨンジュンの名前が確認できる。そう考えると3枚目のアルバム『Clan Of The Rock』(2017)までクラティアが発表した全ての正規アルバムは一度も同じラインナップで発売されたことがない。にもかかわらず、その結果は一貫した路線から一寸の外れることのない統一性を維持する。正にヘヴィメタルの最も華やかな時期と流れだった1980年代のヘアメタルの再現だ。イ・ジュンイルはこれについて、「クラチアは1980年代の感じを最もよく生かすバンドの一つであり、今回のアルバムに特別に主眼点を置いた部分よりは、いつものままを表現するのに焦点を合わせた」と話したこともある。

重いグルーブで武装し、重いオープニングを飾る「Justice For All」は香港の民主化運動がモチーフになった曲だ。 部分的に借用したラップメタルの要素がクラティア特有の美麗なメロディーラインと調和を成し、重いテーマを効果的に伝えている。 周囲の困難な状況に諦めないで前に向かうクラチアの姿をそのまま描いた「Don’t Look Back」の爽やかな疾走と豊かなコーラスは、1980年代のヘヴィメタルサウンドの完璧な転生である。 日常の内容をロックンロールソングガに繋げた面白い歌詞を持つ「We Gonna Rock」まで正走すれば、韓国のロック音楽に関心のあるマニアでも、聞き覚えのないボーカリストのキム・ヨンジュンの名前をもう一度検索してみることになるだろう。

前任のボーカリストであるキム・ドンチャンに比べれば、原石のような感じで近づくキム・ヨンジュンの声は、魅力的な高音と先代のボーカリストに決して劣らないパワーを兼ね備えている。これまで積み上げてきたクラチアの伝統を受け継ぎながら、これからの活動に若くて新鮮な血を供給し、新たな活力を吹き込むのだと期待される。 バンドのリーダーであるイ・ジュンイルは今回新たに入ったボーカリストのキム・ヨンジュンとベーシストのファン・テジョンについて、「隠れた宝石のような存在だ。 入ってきて間もないが、既存のクラティアとのハーモニーがとても自然で、あふれるエネルギーは最高だ」と持ち上げ、新しいメンバーへの期待を見せた。「Don’t Look Back」とは反対側で日常の話をユーモア的に解き明かした「生まれた時からうるさいオヤジだったわけではない」はタイトルから好奇心を誘発する。軽いようで単純な進行とともに一回聞いただけでもすぐに真似できるほどのコーラスは、公演場で観客の楽しい参加を誘導するにも十分だ。

クラティア音楽の長所は、イ・ジュンイルの技巧とパワーを兼ね備えたギターテクニックとともに、優れたメロディーラインと流麗なコーラスを挙げることができる。これは、剛性の曲でもいわゆる「ロックバラードナンバー」でも同様に適用される。ピアノにナ・ウンゾと叙事的なコーラスを並べるポップオペラチーム「ビッグマンシンガーズ」のキム・ジェソンとパク・ドンイルが参加したトーチソング「闇の果てで」やアコースティックバラード「英雄の夢」、またモビディックのキーボーディストであるキム・ソンビンがオルガンフィーチャリングを担当し古風な雰囲気を出すブルージーなトラック「あなた、私の愛」は放送を通じてのエアプレイでファンベースを広げる所持でいっぱいだ。 アコースティックギターのストロークとメジャースケールの進行がアルバムの雰囲気からかけ離れて爽やかな感じに近づく「人魚王子」はアルバムが発売される夏に聞くのにぴったりの異色作だ。

2020年は今まで「コロナ19」がすべてを飲み込んだ一年として記憶されるだろう。クラティアの新譜作業もやはり時期上、メンバーの健康や録音スケジュール管理などコロナ19の影響から自由ではなかった。しかし、このような極端な状況はバンドにさらなる創作の動機を提供した。「Doomsday」はコロナ19パンデミックを素材にした曲だ。「偉大な自然の力の前に、人間の利己心を捨てろ」と叫ぶこの曲で、やはり前述した新しいボーカリストのキム・ヨンジュンの魅力は溢れかえっている。それに比べ、以前チェ・ヤンラクとペン・ヒョンスクのカップルが出演したコメディー番組の中で「都市の狩人」が創作のモチーフになった「Love Machine」は曲の進行だけでなく歌詞の内容までも海外ヘアメタルにそっくりだ。

今回のアルバムのタイトルは『Phoenix Land』だ。不死鳥は文字通り逆境を経て今この場にいるクラチアを、不死鳥の地はそんなクラチアが夢見る世界となるだろう。 世の中は急速に変化し、じっとしていれば、なぜか自分一人だけが取り残されるのではないかと萎縮する時がある。しかし、皆が早い変化に従う必要はない。時には黙々と自分の居場所を守ることが必要な時もあり、そのような愚直さも世の中を変える力になり得るということを、私たちはすでに何度も目撃してきた。我々にとって、クラティアは正にそのような存在ではないだろうか。国内メタル音楽のスタートラインで海外バンドだけが可能だったと信じていたビジュアルとサウンドを誰よりも早く「私たちのもの」にしてみせたが、一緒にスタートラインに立っていた多くの仲間たちの離脱を一番近くで見守らなければならなかった時間。 だが、クラチアはその場に残り、その始まりと変わらない姿で我々のそばに立っている。

コロナ19で萎縮するしかないが、クラチアはアルバム発売とともに状況が好転し次第、「ロックの種族」あるいは「ロックの子孫」としての根気と信念を代弁する巡回公演『Clan Of The Rock』を再び計画している。「コロナが公演界を苦しめているのは事実だが、ショーは続けるべきだ」という固い信念を行動に移すという話だ。「ロックは死んだ」と下手に話す人もいるが、こうした信念があるからこそロックは永遠の命を与えられ、不死鳥として永遠にその命をつないでいくのだ。今までそもうだったように。

文:ソン・ミョンハ (パラノイド編集長)

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